小説 川崎サイト

 

小さな規模

 
 小さな規模でも出来ていたのだが、やがて大きな規模に取って代わられ、小さな規模では何も出来なくなってしまった。
 そういう話は色々とある。たとえば戦国時代の初めの頃は小さな規模の勢力が多くあり、大名規模から大大名規模になり、やがて天下を二分する程の規模となり、小さな勢力が好き放題にやっていた時代は消える。
 大きな規模となり、小さな規模は飲み込まれていったのだが、それには加わらない勢力もいた。その状態では勢力と言えない程規模が小さく、殆ど個人でやっているような規模。
 そういった小さな勢力は意外と自在で、それなりの自由さがあった。あまり他の勢力の影響を受けないためだ。当然大きな勢力からも。
 だが、個人レベルになると、それほど影響力はなく、好き放題はできるが、大したことは出来ない。大したことは大きな勢力がやっている。小さすぎる規模では自由さはあるが、それだけのこと。
 そして小規模は大規模に飲まれるので、小規模以下の規模でいる。ここまで規模を小さくすれば、飲み込まれないで済むのだが、個人レベル。
 しかし、この個人レベルは組織だっていないため、大きな勢力も取り込めない。また、取り込んだとしてもたかがしれているので、相手にもしないだろう。
 相手にされないこと。これが意外と平和だ。当然価値は低いと見なされているが、そうでもなかったりする。少数だが、興味を持っている人がいる。大きな規模から漏れた世界のためだろうか。
 それは特殊な世界ではなく、多くからは相手にされないだけの世界で、知る人ぞ知る世界。その絶対数が少ないだけ。
 規模が小さいと思う通りのことが出来る。出来るが、それだけのことだったりする。
 
   了


2023年4月15日

 

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