小説 川崎サイト

 

落ち着く

 
 色々と落ちないことがある。落ち着かないとか、腑に落ちないとか。中にはオチが最初からないものもある。
 落ちるとそれなりに落ち着く。落ちが付くという話。そのままだが何が落ちるのかにもよる。
 田中が最近気にしているのは、汎用性の高い落ち着きのなさ。この落ち着きのなさは使い方が多い。腑に落ちないときも、落ち着きがなくなったりする。気持ちの上で現れる。これは分かりやすい。
 分かりやすいので、落ち着けるわけではない。
 田中は決まり事がなかなか決まらない。また期日があり、その日が通過するまで落ち着かない。受験での合格発表を待つようなもの。不合格だと表示されなかったりする。
 しかし、あとで郵便で、残念ながらとかの通知が学校や会社などから来ることもある。
 それが分かるまでは中途半端。入学や入社したあとのことは、決まるまで考えても無駄ではないが、消えるかもしれない。ただの空計画空予定。
 店屋の行列に並ぶのは問題はない。列が減っていき、そのうち田中の番になるだろう。これが狂うことはない。
 ただ、前の人までは商品があったが、田中の番から品切れとかもあるだろう。これは早い目に知らせてくれれば、並ばないものを。
 しかし、前の人が何を注文するのかは分からない。
 待ち遠しく思える良い事でも、やはり田中は落ち着かない。その待っているものが何が来るのかが分からない場合、色々と想像する。その予測は出来るが、来てみないと分からない。これは落ち着かないのとは少し違う。その面はあるが、良い事だ。悪くはない。
 腑に落ちないことが長く続くと、忘れてしまうが、釈然としないときは、落ち着かない。分からないのなら想像で決め打ちし、決めてしまってもいい。落ちを田中が決めるのだ。それで少しは落ち着く。それが実際のことではなかっても。
 また、遠く離れたことや、古い時代のことでも、謎が残ったまま解明されていないことは、それなりに落ち着かない。元々解明できない謎だったのだろう。これは想像で決め打ちしたりする。
 落ち着かないことがある時、それ以上の落ち着かないことが起こると、先の落ち着かなかったことが緩む。小さくなる。もう落ちは良いかと。
 それよりも、次に現れた大物の落ち着かない出来事に専念する。
 田中は落ち着かない状態を嫌う。まさに落ち着かないのだ。そのままだが。
 落ち着きのないとき程落ち着くことが良いのだが、先ずは落ち着いて、などとは田中には出来ないようだ。落ち着かないときは無理に落ち着かそうとするよりも、落ち着かないままでいいのだろう。
 
   了


2023年4月16日

 

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