小説 川崎サイト

 

運命の選択

 

「あなたがここに来るのはもう分かっていたことです」
「待っていたのですか」
「そうです。近いうちに来ると」
「どうして分かるのですか」
「ここに来るしかないからです」
「私がですか」
「そうです」
「でも、ここへ来るかどうかは私が決めることです。来なかったかもしれませんよ」
「でも来られた」
「はい」
「あなたが決めたからでしょ」
「そういうわけではないのですが、ここにも来てみてもいいと思っただけです」
「他にも行きましたか」
「はい」
「どうでした」
「思わしくありません」
「色々なところへ行っているのですね。ここもその一つだと」
「はい、候補です」
「候補だけではなく、実際に今日は来られた。実行された」
「順番に回っているだけです。その中の一つです」
「あなたはここで決定するでしょう。もう他へは行く必要がありません。ここが正解なのですから」
「それは、このあとの様子で決まることですが、まだ決めていません。まだお話を伺っていませんし、私の用件も伝えていません」
「でもここで決まりなのですよ」
「どうしてそれが分かるのですか」
「そうなると思うからです」
「でも、根拠が」
「それはありませんが、何となくそう思えるのです」
「謎めいています。そういう人は初めてです」
「あなたの道はここで決まります。そしてあなたの道が出来ます。そのきっかけが、ここなのです。あなたは素晴らしい選択をされた。ここに来たのですから」
「色々と回っている中の一つです。最初からここだとは思っていません。それに私の道って何ですか」
「あなたが進むべき道で、あなたが探している道です」
「探していませんが」
「いないと」
「はい、それに進むべきものも、そんなに望んでいません」
「なんと」
「色々な人と接して参考にしたいだけです」
「参考ではなく実行しなさい」
「別にしなくてもいいのではありませんか」
「あなたはここで決まるのです」
「何が」
「だからあなたの道です」
「どうしてそれが分かるのですか」
「ここに来る者は道を求めてやってくる」
「あ、私は冷やかしでした。すみません。帰ります。失礼しました」
「それでもあなたは」
「お邪魔しました」
 
   了



 


2023年6月27日

 

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