小説 川崎サイト

 

重い思い

 

 思ったことは現実になるという話がある。ただし、可能性のあることだろう。まったく果たせないようなことは現実にはならないし、また現実ではないことも現実化しない。ただ、それに一寸近いものは実現するかもしれないが。
 思ったこととは希望だけではなく、悪い予感なども考えるだろう。これも思ったこと。ただ、現実に起こったことは、思わぬ事が多かったりするが。それは思っていないだけで、気付いていないのかもしれないが。
 悪いことも思うと実現してしまうと怖い話なので、悪いことは一切考えないでおくようになるが、そうはいかない。良いことよりも悪いことを想像する方が実用性は高い。良い事などなくても生きていける。
 思うのと、念じるのとでは違うのだろうか。思いの重さが違うようだが、強く念じた方が実現性が高く、弱く思っているだけでは、実現性が低くなるのか。
 切なる願いも強い願いだ。切羽詰まっているのなら、易いとか難しいとかの問題ではないかもしれない。
 また、思わなくても叶うことがある。逆に強く望んでいない方が、すっと叶ったりする。特に何もしなくても、放置しているだけで。
 つまり、あまり作為的な働きかけをしない方がいい。その働きかけが臭いので、神の手が入らないのかもしれない。ただ、ここでいきなり神が登場するのは違和感を感じるが。
 そのままにしていると、回復することもあるし、また、時期が来れば叶うこともある。ゴソゴソしなくても。
 ただ、何もしないのでは不安なので、一寸働きかけるだろう。結果的には、それが余計なことで、時期を遅らせたりしそうだが、そこは曖昧で、何がどうなるのかは起こるまでは実際には分からない。
 思っても思わなくても、あまり影響がないほうがいい。そうでないと、悪いことを思うと、それが実現してしまうのだから。
 そして、動物的な本能では悪いことを思う方が危険への回避で、そちらの方が多いはず。まあ、動物が物思いに耽るのかどうかは知らないが。
 犬も美味しいものがもらえると、期待することがある。これはいいことを思っているのだろう。餌がもらえる、散歩に連れて行ってもらえるとかだ。
 その思いが飼い主に伝わるかどうかは分からないが、犬なら動きで分かるだろう。思いが伝わるのではなく、仕草で伝わる。
 いいことばかりを思っていると、そうならないことが多くあるので、がっかりする。だから望んでいても、薄い目に願う。軽く思う程度。重く思うと落胆する。重い思いなので、落ちて足の甲に当たると痛い。麩のように軽い思いだと、落胆度も低い。
 
   了

 



 


2023年7月14日

 

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