小説 川崎サイト

 

暑いだけの日々

 

 吉田は少しややこしい問題を抱えており、暑いのだが、その最中だった。モナカを食べていたわけではない。
 それで歯が痛くなり、歯痛を抱え込んだのではないが、それに類する程度の問題だった。ただ身体での話ではない。
 その問題は吉田が招いたものなので、他の者やものを攻めるわけにはいかない。吉田のミス。誰でもできる簡単なことができなかった。しかし、ミスに気付いたとき、地雷を見た。こういうところに罠があったのかと。
 しかし、殆どの場合、その地雷を踏むようなことはないだろう。普通にやっておれば。
 歯痛で一週間程苦しむように、その問題が尾を引いた。引き延ばしたのは吉田で、さっさと片付ければ早く済む。しかし、プレッシャーに負け、実行できないまま過ぎたのだ。
 しかも暑い最中。ややこしい心配事を抱え込んだようなもの。暑さよりも、そちらが気になり、暑さは平気というわけではないが。
 今度やるとき、また地雷を踏むのではないかと恐れている。吉田が知らない何かがまだあるのではないか。前回はそれに近かった。
 ただの勘違いによる自爆だったので、今回は間違わないように丁寧にやれば問題はないはず。それも普通にやればすむことなのだ。前回はどうかしていた。
 今度は心配するようなことは何もない。そのはずだが、もしかして、というのがある。失敗すれば、また嫌な日を続けないといけない。
 しかし、今回は上手く行った。行って当たり前のことなので、行かない方がおかしいほど。それで不安に思っていた地雷とか、偶然の何かで、普通には起こり得ない事態になったとかの、もしも、もしものことは起こらなかった。所謂取り越し苦労。
 そして、無事すませ、やっと平安が訪れた。ただただ暑いだけの平安京。これだけが問題なら、まさに平穏。夏の暑さだけが問題なのだから、喜ばしい暑さだ。
 暑い暑いとだけ言って過ごす夏。これだろうと吉田は思った。
 まあ、勝手にそう思えばいいだけの話だが。
 
   了

 

 
 


2023年7月22日

 

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