小説 川崎サイト

 

ルーティン

 

 三船は日常から少し離れたところに行きたいと思うこともあるが、相変わらず、そこから抜け出せないでいる。
 如何に日々の繰り返しがいいかだろう。外に出て行き刺激を求めなくても。
 つまり今の暮らしぶりがいいためで、そこから離れると、いいかどうかは分からない。いつものとは違うところへ出たいという気がないのは、いいものがないためだろう。
 また、世間で言ういいものでも、三船にとり、それほどでもなかったりする。昼寝をしている方が余程よかったりする。つまり、事足りている。
 そんな三船だが、日々の暮らしぶり、過ごし方がもの凄くいいわけではなく、魅力的で、刺激が沢山あり、退屈さとは無縁ではない。日常そのものが元来退屈なものだが、そこに動きがある。
 ずっと同じことをやっていると流石に飽きるが、同じことを何時間もやっているわけではない。寝ているときはそうだが、それは三船はそこにはいないので、分からない。夢の中でいるが、起きないとどんな夢だったのかは分からない。
 ただ、夢を見ているとき、これは夢だと分かるときがある。それに気付くのだから三船がいる。ただその三船は夢の中の三船で、目を覚ましてからの三船ではないかもしれないが。
 その日々は、あれをしてこれをしてと、次々にこなしていくと、あっという間に一日が経つ。同じようなことを毎日やっていると、日が立つのも早いのかもしれない。
 同じ日々の繰り返しだが、微妙に違いがある。何かが変化しているし、少しだけ状態が違う。それを見ていると飽きないというわけではなく、滑らかに過ぎる日もあれば、ギクシャクし、乗り心地の悪さを感じたりする。
 ゆっくりとやっていると、いつの間にか時間が経っており、時間が押し気味になり、足りなくなる。早く済ませたときは、時間が余り、ゆったりできる。
 違うことを挟むこともできるが、滅多にしない。折角ゆっくりと過ごせるのだから、それに乗る方が乗り心地がいい。
 また、早く寝たいのに、寝る時間になかなかならないこともある。早寝すればいいのだが、そうなると、早く起きてしまうので、ペースが狂うため、我慢して寝る時間になるまで待っている。
 当然、その逆もあり、眠くないので、ずっと起きており、気が付けば、寝る時間をかなりすぎていたりする。いずれも些細事だが、そういうことが気になる。そして明日はどうなるのだろうかと。
 日々の決まり事を順番にやる。そこから離れるには、別のところで半日や一日過ごせばいいのだが、日常の引力が強く、三船はなかなか抜け出せないようだ。
 
   了



 

 
 


2023年7月25日

 

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