小説 川崎サイト

 

自動実行キャラ

 

「これは誤解から生じていますなあ」
「そうだと思います。私はそんなことは考えていませんでした。思いもしなかったことになっています。きっと滝沢さんが誤解して」
「あなたにも責任があるかもしれませんよ」
「私は何もしていません。周囲が勝手に動いただけで」
「だから、その理由があなたにあるのですよ」
「何も思い当たりません。そんな原因が私にあるとは、私の責任だとおっしゃりたいのですか」
「責任云々じゃなく、そうなってしまうのです」
「私の責任になってしまうのですか」
「そうではなく、滝沢さんが誤解したとしても、誤解されるようなところがあなたにあるのです」
「それは解釈の問題で、私の問題ではないと思いますが」
「滝沢さんとはどんな人ですか」
「昔、少しだけ顔を見ただけです。少し話しましたが、関係は薄いです」
「だから、滝沢さんはあなたのことをよく知らなかったのでしょうねえ。それに昔の話だし。それであなたはそうするだろうという誤解が生じたのかもしれません」
「そうです。私をよく知っている人なら、そんな誤解はしないと思います」
「滝沢さんとは何処で知り合いました」
「何かの席で、何度か一緒になることがありました。大勢の人がいました。その中に滝沢さんがいたのを覚えています。だから顔と名前は知っています。それだけの関係なので、浅いです」
「何故、そんなところにいたのですか」
「誰が」
「あなたがです」
「誘われたので行きましが、あまり行きたくなかったのです。頼まれただけですが、断りたかったのです。本当は。しかし、ずるずると」
「じゃ、その席を拵えた人から頼まれたのですね。誘われたのですね」
「断り切れなかったもので」
「じゃ、滝沢さんの間に、その人が入っている」
「はい」
「しかし、その人とはそれほど親しくはない。そうじゃないのですか」
「親しくはしていましたが、仲がよかったわけではありません。何となくです」
「曖昧ですなあ」
「どういうことでしょうか」
「全てあなたから生じたこと。あなたが発生源なのです」
「そんなバカな」
「あなたの曖昧な動きと絡むようにして、その周囲の人間も自動的に絡んでくるのです。絡みたくなければ絡みませんがね。条件が揃えばあなたと絡んでくる。今回の誤解というのは、そういうことでしょう」
「言ってる意味が分かりませんが」
「決してあなたが引き起こしたことではありませんが、そういうふうに周囲は動くものです。あなたの責任とは言えませんがね。あなたに対してそういう動き方になるのです」
「そうですねえ。滝沢さんが誤解して、そんな動きをしたのかが、何となく分かりますが、私も滝沢さんのことなどよく知らないのですよ。滝沢さんも私のことをよくご存じないと思います。ですから適当にやったのでしょう」
「理解できましたか」
「そんな難しい話じゃありませんよ。身から出た錆と同等でしょ」
「まあ、そうなんですがね」
「あなたはいつもそう言う面倒臭く回りくどい説明をするのですか」
「特にあなたには」
「いいカモなんですね」
「一寸、自動実行キャラについて考えていたものですから、ついつい」
「はい、お大事に」
 
   了

 
 
 


2023年8月16日

 

小説 川崎サイト