小説 川崎サイト

 

情報

 

 その朝、ある情報が入ってきた。吉村は驚いた。これは待っていたものが、それだったのかと一寸がっかりする。これではなく。別の情報がいいが、似たようなもの。
 吉村はアンテナを仕掛けている。そこに引っかかったのだ。アンテナの数を増やせばもっと色々と入るだろうが、チェックするのが面倒。情報だけを情報としてみるだけで、具がない。まあ、そう言う話がありましたとか程度だが。
 何カ所かに張ってあるアンテナの一つに掛かると、同じことが他のアンテナでも掛かるので、アンテナを減らしてもいいほど。
 しかし、どのアンテナにも掛からず、吉村が知らないうちにかなり過去の出来事になっていたり、それから展開も結構している。展開が進むと、アンテナに掛かりやすいので、結局は何処かで知ることになるのだが。
 どちらにしてもただの情報。これにはパターンがあり、その情報も似たような展開になるだろう。その時にはもうあまり興味はなくなるが。
 しかし、今回の情報。これは他にも起こるかもしれない兆し。今回はそれほどでもないが、同じようなことが他でも起こる。これもパターン化している。
 また、全体の動きも、最近変化が出てきている。勢いのあったところが弱まり、新たにできたところに移っていったりする。しかし、これもパターン化しているので、読みやすい。
 一寸した情報でも、色々なことを憶測できる。これがあったのだから、あれもあるだろうとか。
 それらは吉村の勘で、推測に過ぎない。半ば期待が入っている。だから勘ではない。そんな力は吉村にはない。ただ、流れが少し変化し始めていることは、何となく気付いている。
 そこには登場しないものが登場していたり、もう終わっているはずのものが別の場所で復活していたりとか、一寸妙なのだ。
 今回の情報も、その妙な現象の一つだろう。全体とか固定したものはあるようでいてない。今はそうだが、そうではなくなることもあるし、またメインから落ちることもある。
 ただの情報、しかし、現実が動いている。だからそういう情報を受け取ったのだ。ただの噂だけの情報ではない。
 田村が受け取った情報は現実にあったこと。田村はそのことで動いてはいない。ただ知っただけ。考慮中だが、おそらく据え置くだろう。もう少し様子を見てからでも遅くはないし、また急いではいない。これは凄いというほどのことではないためだ。
 ただ、一寸した情報だけで、右往左往はしていないが、その周辺の変化が今度は気になる。
 ただの情報、しかし具体性が担保された情報だと、受け取り方が違うようだ。
 
   了

 


2023年9月2日

 

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