小説 川崎サイト

 

妖怪は外にいる

 

 夏場暑いので、活躍していなかった妖怪博士だが、秋風が吹き出す頃、ようやく動き出した。冬眠ではなく、夏眠。
 しかし、暑くて寝てられるものではなく、睡眠時間は逆に短い。そして昼間は長いのだが、何することなく、だらっとしていた。この箇所では動きがない。そのため夏眠。
 ただ、じっとしていたわけではなく、妖怪について考えていた。しかし真夏の夜の夢のように、それは妙なもので、まともな研究内容ではない。ただの妄想だろう。
 ただ、妖怪そのものを研究する場合、この妄想を大いに働かせないと、解き明かせない。ただ、妖怪の実態を明らかにしても、世間での価値は低く、戯言に近い。
 妖怪に姿を与えるのは人々の妄想から。想像した形。その後、その形が広まると、そういうものを実際に見たとなる。想像ではなく妄想でもなく錯覚でもなく。そういうものがいると。
 これは形を知っているからで、知らないと、ただの妖しげな雰囲気で終わるだろう。または怪現象として。
 妖しく怪しい事柄。これが妖怪。
 この妖しいの中に、見たことのないややこしい姿の動物的なものを見出せる。
 ただの火の玉なら怪だろう。ただ、その火の玉の中に目鼻があったりすると、妖だろう。怪しいやつを通り越している。
 妖怪博士はそんなくだらない分類をしていたのだが、他にも妖怪は何処にいるのかも考えた。
 これは頭の中で発生したと解釈しないで、外にいると思っている。妄想や幻覚は内側。頭の中で沸かしたもの。しかし、妖怪は頭の中ではなく、外にいる。
 どういうことか。
 外にいるから他の人にも見えるのだ、または感じたりする。そして同じものを見ている。外にいるというのは、そういう意味だが、これは解釈が難しい。
 確かにヘビを怖がるとかの共通したものがある。その人だけではなく。怖がらない人もいるが。
 しかし、共通に持っている感覚ではない。それなら頭の中にいることになる。
 ただ、ハイブリッドで、外にもいるが内にもいると言うこと。どちらにもいる。その場合、姿となって現れ、他の人にも見える。
 そして、妖怪はその場所にいる。またはその物の中にいる。これは外だ。物怪などはそのままで、内ではなく外にいる。しかし、内にもやはりいたりするのでハイブリッド。両方にいる。
 だから、怪しいものでも怪しさが分からない人には感じることはできない。
 妖怪は外で沸き、内でも沸く、同時に沸く。
 妖怪博士はそのことをちらっと担当編集者に話したのだが、意味が分からないのか、無視された。
 それと、子供にも分かる話しにして下さいと釘を刺された。
 夏場考えていたことなのだが、暑いので、そんな発想が湧いたのかもしれない。
 
   了

  
 
 


2023年9月11日

 

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