小説 川崎サイト

 

付け家老

 

 今まで頼っていた勢力が弱まりだした。その傘下に入っている岡田城主は思案した。同盟ではなく、従属。それは軽い従属で、小倉の家臣ではない。
 しかし、その礼は尽くしていた。だから岡田城は小倉家の城と変わらない。小倉家から家老が来ている。これは見張り、監視。
 ただ、かなり前からなので、その付け家老、もうすっかり岡田の者にも馴染んでおり、岡田家の家臣との縁組みもいくつかある。
 だから、今では岡田家の人としてみられている。小倉家から見れば、それは苦い。監視の役目を忘れてしまったように思われた。
 実際、そうなっている。
 そして小倉家の勢力が衰え、その属国の中に独立する小勢力もいる。これは岡田家もおめおめしておられない。方針を固める必要がある。このままでは小倉家と共に滅んでしまう。
 そこで岡田城主は重臣達を集めて相談した。その重臣の中に、あの付け家老も入っているのだ。だから小倉家に筒抜け。
 そこで小倉家を裏切ることが決まれば、それもすぐに付け家老が小倉城に知らせるだろう。
 それが分かっているのに、岡田城主は付け家老を会議に加えているのだ。
 評定の結果、小倉を裏切り、独立することで決まった。だが、何処の勢力に付くのかは決めていない。少なくても小倉家とは縁が切れたことが他国に分かればいい。
 これは付け家老も合意した。その方がいいと。なぜなら小倉とここで縁を切った方が安全かもしれないと思ったため。
 ところが勢力が衰え、先がないと思われた小倉家だが、盛り返した。逆に敵国へ攻めていくほどの勢い。
 岡田城主や付け家老も、それには驚いた。これは何とかしないといけないとうろたえたが、小倉家は他国を切り取るとき、大負けし、小倉城も囲まれてしまった。
 岡田城側は胸をなで下ろした。付け家老も同じように。
 小倉家はかろうじて危機を乗り切ったが、もう昔の面影はない。
 岡田家の重臣は、小倉城を攻め落とし、小倉家を滅ぼし、岡田家が後釜に座る案を出したが、岡田城主と元付け家老は頷かなかった。
 
   了

 


 


2023年10月17日

 

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