小説 川崎サイト

 

盛り上がらない日

 

 盛り上がらない日々が続いていた。別に活気をなくしたわけでも元気がなくなったわけではなく、何となく昨日と同じような一日で、今日は何をしたのかが思い出せないほど。
 特に変わったことはしていない程度で、これはよくある。ただ、そんな中でも一寸した刺激があり、またこれということをした日がある。
 したというのが印象に残り、寝る前、それを思い出す。これは買い物でもいいし、一寸した仕事でも用事でもいい。
 いつもとは一寸違うもので、歯応えがあるものほどよい。少しの頑張りが必要なほど。これでやっと、してやったりとなる。
 しかし、佐久間は最近、その、してやったりがない。こういうのは向こうからやってくることが多くあり、佐久間は動かなくてもいい。来れば、それを受けるために動く。
 その夜、佐久間は今日は何をしたのかを思い出そうとした。何か一つでも成果があれば、それをやった日となる。
 探すと少しはある。壊した小物を買い直した。別になくてもよかったのだが、ないと少しだけ不便。その少しだけなので、成果も少しだけ。これは取るにたりぬだろう。取り沙汰するようなことではない。
 しかし、敢えて言えばそれが今日の一位。非常に低い一位だが、ないよりはまし。だが、そういうのは日常的にやっているので、言うほどのことではない。
 ただ、日々平穏で、無事に過ごせている。これだけでも充分なのだが、やはり物足りない。しかし、何かを思い立ち、それを実行しても失敗することがある。
 逆に負を背負う。それが元に戻るまでやることができるが、弄らなければ、そんなことをしなくてもいい。
 佐久間は戦国時代の武将、大名とかの一覧を見ていた。その中で、何をしたのかが分からない人もいる。歴史上の重大事に関わってこなかったのか、その程度の動きでは、どうということはなかったのだろう。
 だからエピソードも少なく、家柄が分かる程度。その子孫が今も残っているとしても、この人、何をした人かと聞かれても答えられなかったする。
 歴史にも、言い伝えとしても残らないが、家督を継いだりするのは大変なことだったはずで、また家督を譲るときも、色々と問題があったに違いない。決して何もしていない人ではなく、それなりのことをやっていたはず。
 要するに目立った働きをしなかったので、何もなかったかのようになってしまうが、当時にワープし、その人を観察すれば、意外とハードなことをやっていたのかもしれない。
 歴史と言うよりも記録、または言い伝え。それが少ないほど影が薄いが、そんな人はいくらでもいるだろう。
 また、もう思い出す人もなく、その名を口にする人もいない人もいる。それが殆どかもしれない。
 
   了

 


2023年10月18日

 

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