小説 川崎サイト

 

調子の悪い日

 

 調子の悪い日は大人しくなる。調子のいい日ははしゃぎまくり、大暴れするわけではないが。
 その中間が一番多いはずなのだが、それはどんな状態だろう。
 調子の悪いときは静かになる。ざわめいていたものが静まる。冷静になるのか、調子の良いときは良く見えたものも、それほどではなかったりする。
 白けるわけではないが、過剰な興奮はしないのだろう。
 黒田は今日は調子が悪い。だからその境地に入る。これは瞑想しているような感じで、丁度いい機会だ。
 しかし、冷めたような気分はあまりよくない。あまり楽しくないのだ。
 調子の良いときは、同じものでも楽しめる。楽しもうという気があるためだろう。ただ、調子の悪いときは楽しみたくないというわけではないが、楽しむと疲れる。それに調子が悪いので、楽しんでいる場合ではない。だから脇にやる。
 黒田はそれで調子の悪い状態での静けさを少しだけ味わった。心が揺れない。動きにくい。しかし、黒田の心の定点が何処にあるのかは分かり難いが、好き嫌いや気持ち良さや悪さで決まるのだろう。理詰めで考えたことではない。その情が起こるかどうかは自然に湧き出るので、そこは弄るとわざとらしくなる。
 しかし、黒田は調子が悪いので、意欲的ではない。では何に対しての意欲なのかと考えると、大したことではなかったりする。それでもつまらないものであっても意欲的になる方が楽しめる。疲れたり落胆したりもするが。
 今日の黒田は調子が冴えないが、これは順繰りに回ってくるようで、特に何もしなくても調子が戻っていたり、ハイテンションになる日が勝手に来る。
 だから今日は底だろう。充電期間と言ってもいい。コンセントはいらない。
 喜怒哀楽とかも、周期的にやってくる。そしていつまでも続かない。調子が悪い日はあまりよろしくはないが、それなりの良さもある。
 
   了

 


2023年10月22日

 

小説 川崎サイト