小説 川崎サイト

 

全盛期

 

 勢いがあるように見える頃が全盛期かもしれない。伸び代が期待でき、先が楽しみ。
 しかし、その伸び代は財産で、それを使い続けると、勢いはますます増えていいのだが、使いすぎると、あとがなくなる。小出しに出していけばいいのだが、それでは弱いが、そちらの方が長持ちする。毎回少しずつでいいので。
 しかし、殆ど使い切り、あとは横並びになるが、その頃はもうかなり安定したものになり、逆に新味がなくなる。所謂マンネリだが、そのままならいいのだが、大人しくなる。地味になると言ってもいい。
 このあたりで勢いがなくなったとなるのだが、継続しているだけでも大したもので、弱まってもそれなりの価値はあるのだろう。
 もうそこで充分で、そろそろ終わってもいい。また終わっても誰も惜しまない。もう飽きたと言うことで。
 しかし、それに続くもの、それの代わりになるものが、まだまだ育っていないとなると、その間、まだ続けないといけない。
 そこで、思い切ったことを、その段階でやることになる。これは生き返ったようなものだ。今まで同じことの繰り返しで、しかも大人しくなり、下り坂。それを一気に上り坂に持っていく方へ切り替えた。
 もう安定しているのだから、新たなことをしなくてもいいし、それ以上のことは期待されていても、無理だろうと、思われた。
 むしろ、引き時はいつかと考えていたほど。しかし、引くどころか、まだ続けるようで、しかも今までになかったことをやる。
 やっていることはいつものことなのだが、ある一点に絞ってやる。これは他に類を見ないし、今まで誰もやっていない。そういうふうにはできていないためだ。その一点だけに絞ったものは。
 それは新味があり、いいのだが、逆にその先はもうないと言っているようなもの。つまり、それをやってしまうともう後がない。そのため、これが最後ではないかと。
 伸び盛りが全盛期。伸び代が豊富。しかし、それらを使い果たしたあとが難しい。
 
   了

 



2023年10月31日

 

小説 川崎サイト