小説 川崎サイト

 

ついでに釣り上げた魚

 

 何かを探しているとき、思わぬものと遭遇することがある。実際には常日頃から思っていたもの、または忘れていたが、大事なもので、それを思い出すこともある。この場合、もう実際に探してない。
 最初、探していたものはそれほど大事なことではなく、一寸調べてみようという軽い感じ。
 別に探さなくてもいいような軽いもの。しかし、探している最中に、探していないがそれよりも大事なものと出合ったりする。
 本屋で目的の本を探しているとき、別の本が目に入り、それが気になったようなもの。目的の本よりも大事だったりする。これは儲けものだ。そういう偶然の機会が。
 そういうのはよくあることで、ついつい寄り道をしてしまうのは、本道よりもよさげなため。
 また、何かの用事をしていて、急に別の用事を思い出し、切り替えるとかもある。おそらくその最初の用事をやっていなければ気付かなかったようなこと。
 さて、探しているものではなく、そのとき見つけたものが興味深い。これも、それを探しているから遭遇したようなもので、思わぬところで突き当たったような感じ。
 これは犬も歩けばではない。そのときの犬は目的もなく、ただうろうろしているだけだろう。そうではなく、一応目的があり、それを探している。何でもよくはなく、あるものを探している。
 それだけに絞り込んでいる。場所とか場とかも。時間帯もそうかもしれない。だから似たようなものの出現率が高い。
 しかし、犬の棒と同じで、じっとしていたのでは棒にも当たらない。そして、うろうろすることでは似ている。これは確率が高くなるというより、視界に入る。
 いい場合は手の届くところにあったりする。先ほどの本のように。
 そういうことで、より大事なものと遭遇すると、それが柳の下になり、その方法で偶然の遭遇を狙ってうろうろすることになる。しかし、同じところにはドジョウはいない。しかし、確率は高い。一度見つけたところなので。
 では最初の目的だったものを探す気はないのかとなるが、これがないと探す行為そのものをしていないので、出合い頭や、偶然もない。
 一応は目的を持たないと探す旅には出られない。目的地がないのに、出かけられないようなもの。ただ、出発点へ戻るという方法もある。
 近所の散歩などもそうだろう。一周するだけ。ただ、近所のどこかへ行くという一応の目的があった方が分かりやすい。うろうろしているだけになるので。この場合はコース取り、うろうろのコースが決まっているのだろう。
 そのコース内で、思わぬものと遭遇したりする。いつものコースよりいいものと。
 偶然の遭遇が目的となると、ちょと下心臭くなり、わざとらしさが出る。意識しすぎるので。
 しかし、探しているものではないものとの遭遇。これは忘れていた事柄だと、いい気づきになる。ああ、あれもあったのかと。
 
   了


2023年11月11日

 

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