小説 川崎サイト

 

くつろぎ

 

 さっさと済ませばすぐに終わり、帰ることができる。そこでくつろいだりしなければいい。なぜならくつろぐ場所ではなく、仕事をする場所。
 しかし、佐々木はそこでもくつろぎたい。つまり一息ついたり、一寸違うこともしたい。仕事だけではなく。それだけでは味気ないため。
 実際には仕事だけをし、立ち去ることもあり、そのときは早い。時間が余るほど。しかし楽しいものではない。
 仕事なので楽しさは望んでいないのだが、仕事だけでは味気ないし、機能だけを果たすだけでは。
 用事をこなせばそれでいいだけの話で、それに集中すればいいし、それほど時間のかかることではない。
 別にスリをするのが仕事ではないのでそれほど早くは終わらないが、専念すれば早くできるので、早く戻れる。そして終わってからくつろげばいい。
 と考えているとき、くつろぐとは何だろうかと思った。これは感じただけで、まだ考えていない。思いを引き延ばせば考えている状態に近くなる。
 思いと考えの違いは分からないし、時間の問題ではないのかもしれない。考えている状態は理屈ぽい。論理的な展開がありそうな。
 思っている状態もその面もあるが、漠然としたものを思い浮かべたり、別のものを思い浮かべたり思い出したりする。
 この思い出しているものが思いのメインだろう。印象だけとか、何となくのイメージとかで、繋がりに脈略があるようでも論理的ではなかったりする。
 佐々木がくつろぎを欲しがっているのは仕事中にそういう思いを入れたいため。それが入っていると入っていないのとでは味が違う。しかし仕事に味が必要なのか。
 味のある仕事をする。というのもある。これは雑念や関連することを同時に思い浮かべながら、それらを含みながらやるため、いい味が出るのかもしれない。
 実際に仕事以外のことを横で思うのはノイズ。しかし無機的にさっさとやるとノイズはないが、味気ない。これは佐々木だけが味わえることかもしれず、仕事の結果には結びつかないが。
 しかし、その日はさっさと済ませて早く帰りたかったので、無機的にやってみた。
 それでもできるのだが、その時間、やはり無機的に過ぎた。早くできたが、やっている最中がどうも虚しい。これはロボットのようになるためだろうか。
 それしかできないロボット。余計な雑念やノイズのないロボット。
 くつろぐというのは雑念を沸かしたりすることだろうか。無念無想ではなく、いろいろと思い巡らせながらやる方がくつろげるが、これは本当は必要ではないのかもしれない。
 
   了



 


2023年12月20日

 

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