小説 川崎サイト

 

引く

 

 引いていく。と言うのがある。物事に興味をなくしているとか、このあたりでやめようと思う際のことだが、これはさらに広い意味や状態がある。
 引き際が肝心とも言うが、気持ちが引いている場合、引き際も何もなく、既に引いている。際は過ぎている。
 そのため引きたくないとか、まだ未練が残っている場合、強引に引くことになるのだが、これは自主的ではない面がある。
 肩を叩かれるとかもそうだ。それでそろそろ引くときだと教えてくれているのだが、強制でなければ、頑張ることもできる。しかし、肩を叩かれた時点で、もう終わったのだ。
 長年頑張ってきたので肩もこっているだろうと肩を叩いてくれたのかもしれないが、実際に肩をマッサージしてくれるわけではない。分かりきったことだが。
 そういう引き際、潮時もあるが、勝手に引いていくことも多くある。別に自主的ではなく、いつの間にかやめていることで、決心したわけではなく自然に。
 興味をなくしたと言えばそれまでだが、これにもいろいろと具体的な原因があるのだろう。
 そのものが持っていた魅力が薄まったとか、引きつけるものが弱まったとか、飽きたとか、それはいろいろだが、別のものに引きつけられたりすることもある。
 一度引くと、引いたところから遠目で見るので、その最中からは離れるので、渦も渦中ではなく、離れることで騒がしさが減る。
 引いていく、遠ざかっていくという感じ。これが勝手にそうなった場合は自然だろう。理由や原因が具体的にあったとしても、その気になりにくくなっているのは確か。気が引いてしまうと、もうやろうという気持ちも起こりにくいので、別にやらなくてもいいかとなる。
 気が引けるなども、気が起動しにくいのだろう。その感情にならないと。
 感情はエンジンなので、ここが発火しないと回らない。
 引いてしまうと言うのは悪いことではない。引くことで助かることも多い。
 
   了

 


2024年1月23日

 

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