小説 川崎サイト

 

不調音

 

 白根には何となくやる気のない日がある。日々のことはできるのだが、一歩進めてというのができない。その気が沸かない。
 これは何となくではなく、原因や理由はある。気を削ぐような出来事が白根に起こった。しかし大した問題ではなく、白根自身だけに関係すること。
 人に言ってもああそうと言われる程度。しかし白根自身にとっては重大。だが、日々の生活や仕事に支障が出るものではない。
 いつものことをいつも通りできるのだが、そこからあと一歩進んでという展開がない。このあと一歩の踏み込みは日常的にあるが、別になくても支障はない。
 単純なことならできるが、何か志気が低い。そんな志など本当はいらないのだが、ある方が元気。その元気さをある出来事で、少し削がれた。
 これは損をしたようなものだが、下手に元気だとやり過ぎて平常が崩れる場合もあるので、元気もほどほど。それほど良いものではないが、気分が違う。
 その出来事、一日ぐらいで忘れるようなことだが、なぜか気になる。削がれた元気をそちらで消費しているようなもの。
 この元気、そのうち回復するが、それほど元気でなくてもかまわない。ただし自然に湧き上がる元気さはいい。これは空元気ではなく、無理に鼓舞したものではないので。
 少し元気のないときは、空回りしていた元気さに気付くこともある。あの元気さはいらなかったのではないかと。
 しかしいつもの白根の状態というのも曖昧で、波がある。その中間あたりが白根らしいのだが、そこにずっととどまるようなことはない。
 それなりに落ち着きなさが始終ある。その方が変化があっていいのだろう。大人しくしていると、その反動で元気なことをやり出したりする。振り子のようなもの。
 そして一寸のことで波風が立つ。これは立たせておけばいい。いずれ静まる。その繰り返しだ。ただ周期の長い短いはあるが。
 同じことをしていても、その日の調子で乗りが違う。今日の白根は乗りが悪い。だから調子はよくないが、不調の調べも悪くはない。
 元気なときにはできないようなことができたりする。白根はそう思うことにした。
 
   了

 


2024年1月27日

 

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