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ド・ストライク
一番望んでいたものが突然現れることがある。その逆もあるが。
望んでいるものは望んでいるものがある場所にある。これは推測だが、おそらくそうだろう。またはそれに次ぐようなもので、これはいずれ蓋を開けるだろう。
しかし、望んでいるものだけに、気合いがいる。それで少し田中は遠ざけていた。
また望んでいるものだけをやるのでは飽きてくる。たまにだからいいのだ。
ところが田中の目の前に現れたのは、望んでいるところではなく、一般的なところだ。ここはぴんからきりまであり、どうでもいいものも多く含まれている。
だから何が飛び出すのかは分からないが、一番望んでいるものは、そこには入っていないはず。見つければ望みの箱のような箱に入れて大事に保管するだろう。別扱いにして。
それに漏れたのだろうか、凄いものが現れた。たとえは悪いがノーチェック、ノーマーク。
そして望んでいるものが集まっているものよりもさらによいもので理想的なものだった。望んでいるものでも理想ではないものもそれなりにある。それに比べると、ドンピシャのど真ん中のものが来たことになる。
探していたもの、さらに一番のものが、何の努力もなく、出てきたのだ。手間もかかっていない。
世間は広い。田中が把握していないものがまだまだあったのだろう。
これはどういうことかと思案した。マークしていたもの、見当を付けていたものよりも優れているのだ。おそらくそれはこれまでのところでは最高のものだろう。
そういうものとどうして遭遇できたのかと不思議に思う。タネも仕掛けもない。最初は平凡でよくあるものだと思っていたが、徐々に少し違うぞとなる。
そして理想に近いものになっていき。理想を越えたものになった。あれほど探していたものと、いとも簡単に遭遇できたのだが、これは何だろうと田中は不思議に思った。
その辺に転がっていそうなもので、最初はそれだろうと思い、意にも介さなかったが、宝物が含まれていたのだ。
まるでゴミの山の中に隠れていたかのように。それは少し大げさだが、意表を突かれたのも効いている。いきなりド・ストライクを受けたようなもの。そんなど真ん中などめったにない。それに近いものは知っているが。それを越えていたのだ。
こういうことはいろいろな事柄の中でも起こっていたりするので、ただの偶然かもしれない。
ただ、それがどのタイミングで来るのかは分からない。
こう言うのを体験した田中は当然柳の下を目論む。しかし、そういう仕掛けがそもそも臭いのだ。逆効果の期待外れ、ドジョウはもういなかったと落胆するだけで終わるだろう。
そこから田中は教訓を得ようとしたが、それもまた臭い話のように思え、教訓を掴まなかった。
勝手に望んでいるものと遭遇できたのだから、次もまた勝手に来るだろうと。これは教訓ではなくただ感じただけ。
了
2024年2月2日