小説 川崎サイト

 

化ける

 

 平凡なものが繰り返されている。
 予想はしていたのだが、少しは期待していた。一寸した違いでいい何かを。これは目新しさだろう。
 ところがそうではなく、同じパターンの繰り返し。これは安定した世界としていいのだろうが、何か物足りなさを感じる。
 どうせそんなものだと思っているので、期待していたものが期待していた通りに来ただけ。それでもいい。
 ただ、少しはもう少し踏み込んだものとか、今までにないパターンになっていたとかが欲しい。それをすると、安定した世界から外れるが、いつもいつも同じようなものの繰り返しでは、飽きはしないが、一寸となる。
 安定した世界。何かが切り替わるような時期ではないのでドタバタしなくなった。いろいろな試みもなく、失敗した試みはその後なくなり、まずまずのものばかりが横並び。
 抜群の安定感だが、それが崩れていくのも見たいもの。急激ではなく、徐々に。そうすれば進展や、新展開があるので、そこに期待が生まれる。
 ただ、そういうことも何度か成されたのだろう。とどのつまりの落ち着くところに落ち着いた感じで、ドタバタしても詮無いと分かったのかもしれない。
 しかし、そんな平凡な横並びの中から突き出てくるものがある。その平凡さからは想像できないほどの進展。
 たまにそういうのが混ざっている。何かの弾みでそうなったのか、または違う展開への可能性も残していたのだろう。ごくわずかだが、それがある。
 そしてそれは特出しており、目だつようになり、横並びではなくなる。
 ベースは横並びで同じことの繰り返しなのだが、強さがある。やがてそれは別個のものとして道を開く。過去にもそういうのがあったことは確か。その過去の凄いものもほんのわずか。横並びではなく独自の世界だった。
 ほとんどそれは成り行きか偶然で変わったりする。変貌。化けるという感じだ。だから平凡な横並びの中からもその可能性はある。
 いつ化けるかだ。そして、これまで化けたものは、平々凡々だった。最初から特出した存在ではなかった。
 この平々凡々なものから化けるのが醍醐味なのかもしれない。
 
   了


2024年2月12日

 

小説 川崎サイト