小説 川崎サイト

 

光と闇

川崎ゆきお



「闇は闇をもって制す。毒は毒をもって制す」
「意味は分かりますが、具体的にはどうすればいいのでしょうか?」
「そこよ」
「はい」
「当てはまるものを使えばよい」
「そこまでも、分かります」
「では具体性があるではないか」
「ありますが、それを使いますと副作用が出ます。やくざを使えば解決するでしょうが、お礼が必要になりますし、その後もお付き合い願うとなると逆に問題を増やすことにも」
「闇を制する光はあるか?」
「光はありましても、そこまでは届きません。だから、闇の勢力なのです」
「で、打つ手がなくなったか」
「はい」
「その闇を取り込むことはできぬか」
「反対する者が多く出ます。そんなことをすれば、逆に闇に飲み込まれてしまいます」
「困ったのう」
「だから、相談にきたのですよ」
「わしが教えられるのはそこまでじゃ」
「浅いですねえ」
「シンプルなのじゃよ」
「もう少し深みのあるご指導を」
「そのものを放置することだ」
「放置」
「光があるから闇が生じる。よって光を消すことじゃ」
「それでは成り行きません」
「うむ、そういう状態に落ち至っておるということじゃ」
「では解散せよと」
「光がなければ闇もとりつかん」
「それなら本体もなくなってしまいます」
「作り直せばよい」
「そんな単純な」
「面倒な小細工を弄すより、すっきりしていい」
「作り直すことは可能ですが、解決策にはならないかと」
「何を解決したい?」
「闇の勢力に強い団体です」
「それは希望じゃな」
「はい。作り直しても、同じ轍を踏むかと」
「闇がくれば、また作り直せばよい」
「それは、良い意味でシンプルですね」
「一つだけ知恵を授けようか」
「はい」
「作り直した時に、偽の闇を作っておけ」
「はあ」
「先任の闇がおると思うて、遠慮してくれよう」
「それは飼い馴らした闇なのですね」
「それを魔除けと呼んでおる」
「はい、了解しました」
 
   了


2007年01月11日

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