小説 川崎サイト

 

心配のタネ

 

 ある日、突然、ふっと何かが起こる。これは悪いこととか、一寸心配になるタネ程度でも、気になるものだ。その後、どんな展開をするのかと。
 そのタネのネタ、以前にもあったことだと、そのときの経験が生きるが、同じタイプだとは限らない。前回はその後ひどい目に遭ったが、今回は事なきを得たとか。それはバラバラ。何がその先、起こるのかは先へ行ってみないと分からない。
 気がかりのタネというやつで、気にならなければタネにならないが、気になってしまうと気になる。今、直ちに変化はないが、そのあとだ。
 タネなので、芽が出て葉が出るまで時間が一寸かかる。良いタネなら待ち遠しいし、楽しみだが。
 そういう心配のタネ。取り越し苦労であることを望むが、そうはいかない。そういう例があるためだ。大したことはないと思っていること程、大事になったり長引いたりする。
 逆に心配で心配でたまらないと思っていることは、その後、何も起こらなかったりするのだから、ここは何とも言えない。
 どういう態度で気構えでいようと起こることは起こり、起こらないことは起こらないというのでは取り扱い方がない。
 そんな悪いことを思ってしまうのは、自己防衛や防御の本能らしいという説もある。それで用心するため。
 だから心配になると言うことも必要なのだ。しかし過剰になると自己防御機能が高すぎて、神経質になり、逆効果だが。
 それに平穏な日々ではなくなるだろう。まだ別に何も起こっていないうちから。
 しかし、何もそういう心配のタネが突然現れなくても常駐しているものもある。心配ネタが欲しければいくらでも取り出せたりする。そして、そういうものは際限がない。いくらでも掘り起こせるだろう。
 心配ネタが消えるのは、その兆候や気配がしなくなったり、よく考えると大したことではないと分かったときだろう。
 突然ふっと起こった心配な出来事。そのうち消えてなくなることもある。ただのタネで芽が出ないまま終わる良性タイプ。それにはこれは大丈夫という証拠のようなものが欲しい。それを得ると安心する。
 タネのうちはまだ本当に起こっていない。起こったときは起こったときの話にするのが一番良いが、少しは心配することも必要だ。
 
   了



2024年3月12日

 

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