小説 川崎サイト

 

メイン崩し

 

 吉田にとっての本命。メインと思っていたものが崩れそうになることがある。まだ崩れてはいないが、どうもそれではないような気がしてくる。
 これは慣れてしまい、飽きてきたのかもしれない。もうそれ以上のものがなく、発展もないような。
 それは木の一番太い幹。あとは横枝。その一番上がどうもそれ以上伸びない。その木に限界があるのだろう。天まで続くわけではない。それよりも横枝が好き放題に伸びている。そちらの方が勢いがある。
 また、本命が本命としてだけあったようなものが、他の木の中にも入っていたりする。これは別のものなので無視していたのだが、本命の要素がそのまま入っている。
 だからその箇所だけなら本命と変わらない。ほとんど同じ。ただその先の展開が違うが、本命ではあり得ない展開。これは木の種類が違うため。
 また本命の木はそれ以上は伸びないが、種が違うと、その限界を突破し、極限まで伸びている。その差がありすぎる。
 本命の勢いがなくなり、逆にタイプ違いの樹木が本命をも取り込んで勢いよく伸びている。本命では果たせなかったさらにその上も加わる。
 吉田は、そちらの方がいいのではないかと、最近考える。本命と言っていたものが古典になるようなもの。もう終わっているのだろう。
 その別の種の木、吉田は相手にしなかった。完全に別個のもので、吉田が望んでいるものではなかった。しかし、望んでいるものが取り込まれているのだから、そこはどう考えればいいのかと迷った。
 どうもそちらの方に目が行く、興味が行く。これは吉田も変わったのだが、本命も変わり、別の木もまた変わったためだろう。
 ただ本命の変わり方は後退のようなもので、もう勢いがない。吉田が別の木を気にしだしたのは、そこにも原因がある。
 その本命を越える別の木は、以前なら特殊なもので、一般的ではなかった。こちらも古典化のようなことが起こり、固まってしまったのだが、最近は新たな展開になっている。だから勢いがある。
 その新たな展開とは、吉田が本命だと思っているものを取り込んだことだ。その逆もある。
 つまり、本命側からと別の種とが交差する場がある。吉田はそこに興味を示している。
 立場は違えども同じことを狙っているのではないかと思えるほど。結果はかなり違うのだが、その過程は同じ。
 吉田の変化もあるが時代の変化もある。それが何処かで交差するのだろう。吉田も世間も動き続けている。
 
   了


2024年4月6日

 

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