小説 川崎サイト

 

月一の圧

 

 平田は月に一度だけの用事がある。同じ日に、二つのことをするのだが、どちらも圧、プレッシャー、バイオスのようなものがかかり、数日前からその影響下に入る。
 まるで台風の圏内。しかし少し風が強い程度の強風圏。まだ暴風圏内ではないし、台風はその円の中を通るのだが、それなりに広いので、平田の真上を通るわけではない。それならストライクだ。
 また、圏内に全く入っていなくても、月が変わると、今月もあれをしないといけないと思うだけで、その影響下に入るが、これは遠いので、さすがに身近に感じないが。
 ところが今月は忘れていた。前日まで。
 カレンダーを見て気付いたのだ。ああ、明日かと。実は月が変わったときは知っていたし、一週間ほどに近づいたときも知っていた。しかし前日まで気付かなかった。
 これは逆にのんきでいい。日が近づいてきつつあることを知らなかったのだから、その間、憂いはない。しかし、心配するような怖いことが起こることではないが、その可能性はある。
 そして悪いことではなく、実はいいことなのだが、どうも居心地が悪い。
 しかし、今回は気付かなかったのだろう。その日が十日としよう。ただの十日が過ぎ、十一日なるだけ。
 前日、その十日で気付いたのが幸いで、下手をすると十日になっていても、コロッと忘れていたかもしれない。
 過ぎてから気付いても遅いわけではないが、それはやはり十日の日にやった方がいいし、またそのように決めている。その日は動かしたくない。翌日でもいいのだが、それはできない。
 いつも通りがよく、そこは変更したくない。それで物事が変わるわけではなく、平田の心構えが変わるため。
 決まり事を決まった日にやるという平田が決めただけの話。
 それで前日に気付いたので、当日は難無きを得た。心配していたようなことは起こらず。予定通り。しかし、予想はそうでも、外れる可能性を秘めているので、もしものことがあるので、やはり心配。
 そして何事もなく、簡単に終わり。もうそのことは当分考えなくてもいい。次はひと月後なので。
 また、平田にのっぴきならぬことが起こり、この月一度のことができなくなる可能性もある。
 世の中には完璧に安定したものはないのだが、ある範囲内では変わる可能性はないものもある。また変わっているのだが、表面では分からないこともある。
 平田が受けている月一度のそのプレッシャーのようなもの。いずれ捉え方も変わるだろう。
 
   了



2024年4月14日

 

小説 川崎サイト