小説 川崎サイト

 

肝心要

 

 新しいものが出てくるのはいいし、それは出続けるのだが高山は期待できない。以前のようなものがなくなり、見た目は派手でいいのだが、中身が大人しい。しかし昔と比べれば随分と進んでいるのだが、高山が期待しているところは止まっている。
 だから一つ手前の頃が全盛期で、そこがピークだったのかもしれない。その肝心要のところが大人しくなり、次から次へと出てくるものを見ていてもやはり要のところは止まっている。後退しているのだ。
 もっと古いものの中には、その肝心要のところがしっかりとあるのに、それが残念でならない。今ならもっと進んでいるはずなのだが、ストップがかかり、そちらへはもう行かないようだ。それで高山はもう諦め、古いものを掘り起こすことにした。
 そちらも大半は知っているのだが、まだまだ発掘できる。だが、もうそれらは終わった世界なので、新たに生まれることはない。
 何処でそれが止まってしまったのかを高山は知っている。その時期があり、そこから大人しくなっていった。ただ、別の箇所では昔のものよりも派手で、そこは期待できるのだが、肝心要のところではない。だから残念。
 この肝心要のところは高山だけが望んでいることかもしれない。
 まずまずなものなら追いかけない。これは凄いと思えるものなら追いかけられる。そのため、高山は最近追いかけるものを失ったかのようにみえる。そう感じているので意欲的にはなれない。
 高山が気に入るもの。それが時代と合わなくなったのか、時代が許さなくなったのか、そういうものが出なくなった。出せるのだが出せないのだろう。
 それで高山は行き場を失ったが、当分は古いものの中に残っているので、そこを探している。当分はそれでいいだろう。
 しかし、肝心要のところを大いに進めているものもある。これは少ないので、大勢ではないが、知る人は知っているのだろう。そこが大事であると。そしてこれが本来の道筋だと。
 ただし、それは少なすぎる。だが貴重な肝心要のあるものを出し続けている。ただし少数派ではない。その肝心要がやはりいいからだ。
 しかし、それはぽつりとあるだけで、他では見かけない。だから、やはり高山が思っているだけの肝心要なのかもしれない。しかし、期待できる唯一のものになっており、似たようなものは古い時代のものにはあるが、今はもう消えている。
 高山は新たなものが出るたびに、期待するのだが、やはり途絶えている。
 次々に出る新しいもの。見た目はいい感じなのだが、肝心要が欠け落ちているのでは、惜しい気がする。
 
   了

 


2024年6月9日

 

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