小説 川崎サイト

 

赤竜と青竜

川崎ゆきお



「竜が目覚めた。赤竜と青竜が」
「ほう」
「伝説の竜だ」
「なるほど」
「感心しておる場合ではない」
「何が」
「世界の危機じゃ」
「赤竜と青竜が悪いことでも」
「彼らは聖獣であり霊獣だ」
「では、問題はないのでは」
「彼らが目覚めたのは、異変を感じてのことだ」
「異変?」
「世界の危機のな」
「何が起こるのですか」
「分からないが、危機であることは確かだ」
「その赤竜と青竜の役目は?」
「危機を救うためだ」
「でも、危機が何か分からないのでしょ」
「起こってからでは遅い。だから、その前に目覚めたのだ」
「なるほどねえ」
「このことを世に伝えねばならない」
「はあ」
「君がだ」
「わたくしがですか」
「そうだ。君が使徒だ」
「使徒」
「危機を伝える役目だ」
「でも、赤竜と青竜は、どこにいるのですか」
「奥地じゃ」
「深山とか」
「まあな」
「伝えなくても赤竜と青竜が解決してくれるのではないですか。そのために目覚めたのでしょ」
「彼らだけでは無理だ」
「頼りないですねえ。それにどんな危機なのかも分からないのでしょ」
「赤竜と青竜が感じる危機だ」
「と、いうと?」
「あちら側からの侵入だろう」
「侵略ですか」
「まあ、そうだ」
「それを、町内の人に伝えればいいのですね」
「もう少し広くな」
「ネットを使いましょうか」
「それは良い考えだ。世界中に伝えられる」
「早速やってみます」
 しかし、すぐに削除された。
 
   了

 


2008年05月09日

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