小説 川崎サイト

 

嫌な人

川崎ゆきお



「彼が来なくなった原因は何でしょうねえ」
「嫌な人がいるからでしょ」
「このメンバーにですか」
「おそらく」
「誰でしょう?」
「さあ」
「誰か、意地悪しませんでしたか」
「そんな悪意のある人は、このメンバーにはいませんよ」
「それはそうだ」
「じゃ、何でしょうね」
「彼の問題じゃないですか」
「つまり原因は我々にはないと」
「そうです」
「そう思いたいところなんですがね。以前にもいたんですよ。嫌な人がいるから来なくなった例が」
「それは、その人の言い訳じゃないのですか」
「後で、聞いてみましたよ。こっそりと。名指しで、その嫌な人を教えてくれましたよ」
「木村さんは、それは知っているのですね」
「それは秘密ですからね。言いませんよ」
「この中にいますか」
「さあ、それは」
「だって、このメンバーのままですよ」
「今度やめた彼かもしれませんよ。彼もメンバーでしたからね。どうなんです? 木村さん」
「それも含めて秘密ですよ」
「嫌な人がいるというのは、ちょっとショックですよ。今後そんなことで来なくなる人も出ますよ。ここは我々にも反省すべきことがあるのでは」
「反省も何も、そんな悪意のあるメンバーはいませんよ。やはり来なくなった人の問題じゃないですかね」
「でも、名指しでしたからね」
「やった人がいるんだ」
「やったって?」
「嫌がらせですよ」
「だから、それを嫌がらせと受け取る側が問題なのです。だから本人の……」
「しかし、メンバーが徐々に減っていますよ」
「来なくなった人全員が、嫌がらせを受けたとは思えませんからね。別の理由で来れなくなったのでしょ。私はそう聞いていますが」
「それは、直接理由がいえないからじゃないですか」
「これで残ったのは三人ですか」
「我々は大丈夫ですよね」
「当然ですよ。みんな仲がいい」
「そうそう。嫌な人なんていませんよ。この中に」
 次回は二人になった。
 
   了


2008年07月10日

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