小説 川崎サイト

 

神仏

川崎ゆきお



「神と仏、どちらが好き?」
 深夜のファミレスで若者が話している。
「それは、どちらを信仰するかの問題かい」
「信じてなくてもいいから、好きなのどっち」
「強いて言えば、神様かな」
「どうして?」
「日本固有のキャラだから」
「そうなんだ」
「仏さんって、他の国にもいるじゃない。向こうから来たんだから、当然だけどね。日本だけのものじゃないでしょ」
「じゃ、キャラの独自性で神がいいの」
「スタイルとしてはそうだね」
「スタイル?」
「どちらがいいかと問われたときの構え方かな」
「それ、スタンスじゃない」
「その問題はいい」
「神さんも世界中にいるね」
「世界中にいる神様もいるけど、日本の神様は日本にしかいない」
「それって、右翼」
「はあ?」
「日本固有のものを強調するから」
「そういう分け方は、僕、好まない」
「あっ、そう」
「ところで、どうして聞いたの。どちらが好きかって」
「暇だから」
「あっ、そう」
「神罰ていうけど、仏罰はないの」
「仏罰とは言わないなあ。聞いたことない」
「仏敵ならある」
「仏様はそんな真似しないんだろ」
「優しいねえ」
「君は仏派かい?」
「仏像はよく見るけど、神像ってあまり見ない。日本の神様の彫刻、見たことある?」
「あるよ。ヤマトタケル」
「それ、神様」
「さあ……じゃ、福の神は」
「それ、言い出したら、何でも神様になるじゃん」
「キャラが多すぎるんだ」
「お稲荷さんは有名だよ。あれ、神社にあるから、神様でしょ」
「あ、それがあったか」
「人格神よりより、動物神が好き。かわいいから」
「ああ、そうくるか」
 二人の雑談は続く。

   了


2008年10月8日

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