小説 川崎サイト

 

カレー振る舞い

川崎ゆきお



 元有名スポーツ選手が子供たちのためのわんぱくスポーツ教室を開いている。
 運動後、カレーが振る舞われる。元選手手作りのカレーだ。
 子供たちは二十人ほどいる。当然大きな鍋だ。
 元選手はできたてのカレーを運ぶ。
 夫人が皿にご飯を盛る。
「食いたいかー」
「はい」
「元気がない。食いたいかー」
「はーい」
 子供たちはご飯の上にカレーをかけてもらう。めいめい皿を持ち、並んでいる。
 まるで施されている餓鬼たちのようだ。
 元選手は、お玉一杯分をぶっかける。
「ありがとうございます」
「声が小さい」
「ありがとーございまーす」
「よーし」
 子供たちは正座してカレーを食べるスタートを待っている。
「食べたいかー」
「はーい」
「じゃ、食え−」
「はーい」
 元選手は、満足げに見ている。
 子供たちは必死に食べている。
 元選手と夫人は控え室に去った
「ふー」
 子供たちはカレーが好きだ。しかも元有名選手の手作りカレーだ。
「結局チキンカレーなんだなあ」
「けちだよ。海老フライがのってるの食べてえなあ」
「俺は、カレー嫌いなんだ。辛いの駄目なんだ」
「残すなよ」
「ああ、ビニール袋持ってきているから、そこに捨てる」
「おい、聞こえるぞ」
「大丈夫、聞こえないさ」
「水が欲しいなあ」
「コップないじゃん」
「俺、ペットボトルに水入れてきた」
「飲ましてくれろ」
「ああ」
「でも、どうしてカレー食べるのに、礼言わないといけないのかなあ」
「先生が作ったものだからさ」
「でも、お金払ってるんだろ。月謝」
「うん、高いらしいよ。母ちゃん言ってた」
「あの先生テレビで最近よく見るよ」
「親は、そういうのに弱いんだ」
「そうなの」
「あ、来た」
 元選手が控え室から出てくる。
「食べたかー」
「はい」
「そうじゃないだろ」
「ごちそうさまでした。ありがとうございました」
 一人の子供が頭を言い出すと、そのあと全員その台詞を続けた。
 子供たちは元気な子供の演技を続けた。

   了


2008年11月13日

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