川崎フォトエッセイ  その56      ←前 次→  HOME


 大きな駅は日常と非日常が交差している。通勤通学の人は日常だが、旅行者は、いつもと違う場所へ移動する。

 同じ改札を通り抜けても、上るホームが違うのだ。毎日毎日同じホームに立つ人達から見れば、向こう側のホームが気になるのかもしれない。

 ふだん見慣れた通勤圏の車窓風景も、長距離列車から見ると違った趣として映る。一寸引いて見ることができるのだ。

 また同じ場所へ行くときでも、例えばJRと私鉄とでは沿線風景が違う。車窓風景は、ごく一部を線的にたどっていることは分かっているのだが、その印象が残ってしまうのだ。そのため、乗り物を換えると、違った街が出現する。

 いつもの駅がいつも通りでないのは、その人の関わり事にしか過ぎないのだが、味わい深いものがある。ただの感傷なのだが、感傷を観賞するのも、また楽しい。