川崎フォトエッセイ  その89  自販機    ←前 次→  HOME


 古い建物の軒下に、自販機とかが置かれていると、ミスマッチのようで、景観を壊すと思っていたが、最近は馴染んできている。

 逆に時代劇風な建物しかない景観のほうが落ち着かない。自販機や電柱が入っていたほうが安心する。

 古い佇まいは、かなり強引に作為しないと生まれない。景観を損ねるようなものを取り除いたり、今風なものを加えないことで守られるのだが、見る方としては、その保存努力が見えてしまい、普段の風景ではなくなってしまう。

 見る側も自販機に見慣れてしまい、慣れると、その存在自体が希薄になる。

 景観と同じように、僕らの精神内にも、古いものと新しいものとが同居している。そのリズムで見ているかぎり、違和感は起こらなくなるのか、逆に自販機がない街角は不自然なように思えてしまうから不思議だ。

 また、車の通らない道路も、異様である。いつの間にか今の景色を身体が受け入れているのだろう。それは、今をリアルタイムに生きているからだ。