川崎フォトエッセイ  その98  照明    ←前 次→  HOME


 夜中に、フト外に出てみると、妙に明るいときがある。新しい街灯でもついているのか、はたまたまだ起きている家があって、窓から光が漏れているのだろうか……と、周囲を見渡したが、そうではない。なんと、月の光が犯人だった。

 月明かりなど、市街地で暮らしていると滅多に体験できない。もっと昔なら、たとえば銭湯の行き帰り、月の光で発生した人の影を踏んで戯れた覚えはあるが、今は、街灯や車のヘッドライトで、道路上に月の影を見る機会など滅多にない。

 人家から漏れる光で、通りも明るくなった。特にコンビニ前や自販機前は、街灯がいらないほどだ。

 よほど薄暗い路地裏でも通らないかぎり、懐中電灯なしで夜中でも歩ける。

 しかし、月明かりの道も忘れがたい。「今日は満月だから夜道も明るい」などと、言ってみたい。昼を照らす太陽。夜を照らす月。最近忘れがちである。