川崎フォトエッセイ  その203      ←前 →次  HOME

 大昔にできた、煉瓦の塀や壁は残っているが、木の板でできた塀とかは、腐ってしまうのか、遺跡的には残りにくいようだ。木造建造物の寿命は意外と長いのだが……。

 町内にあるような塀は、通りから敷地の中が見えないように、目隠しのために作られるのだろうか。もし見られても良いと思う人なら、塀は必要ではない。しかし塀がなければ、通りがかりの人が侵入してきそうだ。それが厄介なので、仕切の意味で、塀を作るのだろう。

 敷地の狭い屋敷だと、塀と母屋の隙間もほんの僅かである。その隙間は狭くても庭である。高い塀で仕切ると、もう屋内と同じで、外からは庭さえ見えない。そこで行水をやっても、覗かれることはないが、その気になれば、塀程度ならよじ登ることはできる。

 その意味で、町内の塀は「進入禁止」程度の合図だ。塀を乗り越える行為は、普通の社会人にはできない。その行為が意味していることは明白で、社会的制裁を加えられることがはっきりしている。

 塀は仕切だが、何となく約束事でできているような感じがする。