川崎フォトエッセイ  その236  町内幻想    ←前 →次  HOME

 駅前にある高層マンション、よくある絵だ。これは街の効率を考えると、自然とこの絵になるのだろう。もし高層マンションの各世帯を、平屋建ての一戸建てにすれば、駅からはほど遠くなってしまうだろう。

 マンションには町内の景観がない。同じユニットが繰り返される通路があるだけだ。通路はあくまでも通路で、通ることが出来ればそれでいいのだが、伝わってくる情報が少なく、それだけに情緒面で辛くなる。

 垣根の曲がり角で、たき火をする景色や、屋根の上から見下ろしている猫や、雨の日に出来た誰かの足跡……。この種のものは、生活上、邪魔になっても、機能的な意味はあまりない。第一、売っていないものだ。

 まあ、最初から丘や山だった場所に新しい街を作った場合、町内が拡大したと見るべきで、昔の町内を再現させるのは無理な話だ。ここで言ってる昔も、僕の子供時代の昔でしかないため、いずれにしても町内幻想と言うべきだろう。