川崎フォトエッセイ  その275  ノスタルジー    ←前 →次  HOME


 ノスタルジーは古い記憶へアクセスするときに起こる感情のようだ。その古さは遡るほど深く濃くなる。この場合の濃さは、情報量が少ないために起こる錯覚かもしれない。つまり詳細の記憶が飛んでいるため、あらぬ想像で補うためだ。

 自分が体験していない記憶は、データとしては残っていないため、再現させることはできないが、感じることはできる。

 人類が体験した記憶が、今、産まれてくる赤ちゃんの一人一人の中に、圧縮ファイルとして、コピーされているのかもしれない。それは解凍しないと、出てこない。当然、解凍用のプログラムが必要だ。

 それらのメカニズムは、気持ちを微妙にさせるだけで、あまり実用性はないように思える。ただ、ノスタルジーは個々に枝分かれし、違った状態の中で生きていても、共通する感情としてあるようだ。それは「こうなってしまった今」に対する感傷とも言える。