川崎フォトエッセイ  その287  元旦    ←前 →次  HOME


 正月という言葉は、子供のころから自然に耳に入ってくる。この国の中で暮らす限り、正月はディフォルトととして、存在する。

 この国ではクリスマスの一週間後に正月がやってくる。気ぜわしい師走が過ぎると、ぴたりと風が止んだように、元旦がやってくる。何か一年がフォーマットされ、何も書き込まれていないハードディスクを与えられたような感じだ。物理的にはそうではなかっても、精神的にはそうなのだ。

 元旦になると、ある時代にまで戻ってしまう。それは正月行事が定着した時代だ。しかし最近では、元旦から営業している店も多くなり、普段の街と変わらない場所もある。

 正月はやはり一度、日常を寸断する意味でも、うつろな時間が欲しい。12月31日の単なる次の日が1月1日なのだが、単位としてわかりやすいため、年が変わったショックを味わうのもいい。