川崎フォトエッセイ  その318  ピンボケ    ←前 →次  HOME

 眼鏡をかけている人が、それをはずすと。景色がぼんやりと見える。また、目がいい人でも、妙なところに視点を置いているとぼやけて見える。

 特に注意して見るべきものではない事柄に対しては、ピントも甘くなるようだ。ただ、面白いのは注意深く凝視しているときよりも、ぼんやりと見ているときのほうが、本質が見えてくることもある。

 これは、ボカすと言うよりも、引いてみる感じとなり、いわば客観的な視点になるのかもしれない。凝視すると、どうしても自分との関係や、具体的な接点で見てしまいがちで、「見ている自分」が溢れすぎるのだ。

 ぼやけた風景は、さほど意識的に見ていないため、カメラのレンズのような目の玉になっているのだ。そして逆にカメラでは、ピントがどこにも来ていない写真は、写真らしくなく、ピンボケ写真としてゴミ箱に捨てられることになる。