川崎フォトエッセイ  その339      ←前 →次  HOME

 カメラで雨を写すのは難しい。雨そのものが透明で、しかも「降っている」ため、それなりのスピードで動いている。

 そのため、水たまりの波紋などを写して、雨が降っているような感じを見せることになる。当然傘をさしている人が写真の中に入り込めば、わかりやすい。

 しかし、写真のどこを探しても、雨の痕跡がないため、本当は晴れているのに、誰かに頼んで傘を差して歩いてもらっているのかもしれない。写真が信用できないのは、そのあたりにある。だが、実際には邪推する人の方が、恐い存在である。

 人はどこまで作為のあとを追うのだろうか。もしそれが、無作為なら、疑っている人の方がどうかしている。ただ、無作為を装う人もいるため、疑心暗鬼に陥ることもある。  しかし雨が降っていたことが、すごく大事なポイントではない限り、想像力をそれ以上動員しないようだ。