川崎フォトエッセイ  その347  路地の結界    ←前 →次  HOME

 路地を通り抜けるとき、人の視線が気になる。ガラス戸の向こうに人がいて、こちらを見ているのではないかと思うからだ。中から見れば、見知らぬ通行人である僕が歩いているわけで、これは警戒されて当然ではある。

 その警戒されている僕も、中の人を警戒している。ただ、僕は身元が分からないが、中の人は、そこが住処のため、逃げも隠れもできない。

 この種の感覚は、マンションになると、ほとんどない。つまり露出度の問題で、程良い見え方が好ましい。

 マンションは物理的に閉ざされているが、路地は目に見えない結界で防御されている。昔の長屋では夏場など戸を開け放して寝ていても、結構安全だった。侵入する側も、身を隠す場所が少ないので、迂闊に近寄れなかったのだ。

 しかし今は、その種の人の住みかに対する結界が壊れかけている。