川崎フォトエッセイ  その389  風化    ←前 →次  HOME

 もともとそういうものではなかったのだが、年月を経ることによって違った印象を与えてしまう現象がある。

 例えばペンキが剥がれてくると、独自の模様が浮かび上がる。もともと無地だった場所が自然の悪戯で思っても見なかった形を生み出すのだ。作った人がそれを狙ったとは思えない場合、人工物の宿命のようなものを感じる。

 それだけに形や色が変わりにくいものは、貴重品になりやすいのだろう。宝石とかがその例だ。

 僕らが普段使ったり利用したりする人工物は、知らないまに摩耗し、風化していく。それ以上に時代感覚的な風化も加わる。

 風化してからの年月のほうが長いため、風化後の「生き方」が大事になる。その意味で最初から風化してしまったものを作るのも、面白いかもしれない。意地の悪い言い方だが、どうせ風化するのだから。