川崎フォトエッセイ  その412 未完の趣       HOME

 陶芸品を見ていると、焼き具合によるアナログ的な変化に味わい深いものがある。それと同じように、コンクリートで固められたドブにも、同じ味わいが発生しているのだ。

 茶碗や皿が実用品であるように、ドブも実用性のある人工物である。焼き物は観賞をも狙ったものもあるが、ドブにはそれがない。その種の作為はないのだ。

 コンクリートのドブと、陶芸品とは比べるほうがどうかしているが、陶芸品に劣らぬほど、素晴らしい変化を見せてくれる。まあ、それは河川に近いものだし、自然に近いものだけに、変化の規模もダイナミックだ。

 陶芸品が、何らかの自然現象に近いものを、固定させているのに比べ、河川は変化し続ける。そのため、「美的」でないときもある。

 陶芸品は完成されたものだが、自然の中で見いだされる似たような趣は未完のまま、変化し続ける。