川崎フォトエッセイ  その416 露店       HOME

 露店でものを売る側の位置から通行人を見ていると、状態がよく把握でき、独自の解放感を味わえる。

 露店そのものは、移動式で、そこに最初から店など構えていないのだから、ある日現れた蜃気楼のようなものである。翌朝になると、そこは普通の通りに戻っている。

 露店の奥に客席があるといっても、はっきりとした仕切があるわけではない。調理している場所との仕切もない場合が多いため、作ったり売ったりしている姿を後ろから観察することができる。これは客の視線ではなく、売る側の視線と同じだ。

 客に後ろ姿や、裏側を見せている飲食店は滅多にない。その箇所はブラックボックスで、芝居小屋とかで楽屋裏を見せないのと似ている。

 露店で買い食いすることが、それなりに解放感が味わえるように、日常の中の形式に縛られた頭を、少しはほぐしてくれる。