川崎フォトエッセイ  その444 紙の家       HOME


 襖や障子は紙でできている。それらは取り外しが可能で、二つの部屋を一つにしてしまえる。プライベートな個室という感じは物理的にしにくい。単なる仕切なので、声は筒抜けである。間にもう一部屋置くとか、何処とも接しない離れの間を作らない限りプライベートは守られない。

 一つの部屋も、衝立とかを置くことで、さらに分割される。しかしこの障害物のおかげで、死角が生まれるため、同じ部屋内でも、見えなくすることができる。見ようと思えば、衝立の横に来れば可能だが、衝立の意味が邪魔をして、寄るには覚悟が必要となる。

「壁に耳あり、障子に目あり」で、見られ、聞かれることを覚悟の上での生活となるが、それは微妙な距離感でフォローされている。

 襖が閉められている状態は「見ないでくれ、立ち入れないでくれ」の合図で、それを超えての行為は関係を崩すことになる。

 建物だけで守られた世界ではなく、人としての立ち振る舞いで維持している微妙な世界がそこにある。