川崎フォトエッセイ  その609  欲望の街      HOME

 見なければ、または知らなければその気にならなかったことがある。僕が知らなくても世の中にはあらゆるものが存在している。僕と関わりのあるものもその中に含まれているのだが、遭遇する機会がなければ、気にするタイミングはない。

 世の中にはだいたいどんなものが存在しているのかについては、おおよそのアウトラインは分かっている。しかしその中身は現物と遭遇しないと実体は分からない。

 街に出ると、実物や実体と遭遇する機会が多くなる。それらは既知のジャンルや、その変形にしか過ぎないにしても、同じ空間内で実物と遭遇すると、概念から固有のものとの関係になるためか、独自の情報が伝わってくる。そして、僕の欲しているものと繋がったとき、まるで電流が走ったかのように、内面の回路が活発になる。

 本当に必要なものや、そうでないものでも、目の当たりにすると、活気づく。欲望は刺激されないより、されるほうが、人は活き活きするものだ。