川崎フォトエッセイ  その629  山麓の家      HOME

 山麓に建つ家は高い場所にあるため、坂の上り下りが大変だ。そのため行き来の不便さがあると感じるのは、通勤とか通学を気にしてのことだろうか。

 宅地開発で、発生したような家ではなく、昔からある山麓の家は、超然とした趣がある。

 奥まった場所は不便さと引き替えに静粛がある。ある不便さが、住む人にデメリットにならない場合もある。

 里が山にかかるあたりには、昔から神社やお寺があった。それと同じような立地条件の場所で住むというのは、ある意味で俗界から遠のいている。しかしそこも里のなかで、里と切り離されているわけではない。

 最近は山麓を削り、道路を通し、宅地に変えていく。それは里との微妙な距離感ではなく、山麓そのものを里にしてしまう行為だ。

 その視線で見ると、坂道が苦痛なものになるのかもしれない。