川崎フォトエッセイ  その671  撫で肩      HOME

 日本の風土の中では家の屋根は「への字型」をしているほうが、馴染みやすい。それは木造建築が展開する町や村の風景が脳裏にあるためかもしれない。最近建つコンクリート造りのマンションも、とんがった屋根になっているものが増えている。4階建てマンションなら、とんがった屋根をもう少し拡張すれば、五階になるところを押さえている。逆に言えば、余計な付け足しなのだが、屋根部屋のおまけが付く。

 垂直線と水平線だけの景観は硬い。そこに斜線が入ると曖昧さが加わる。傾斜の角度は非常にアナログ的だ。

 その傾斜が、建物の肩になり、傾斜がきつい場合は撫で肩になる。

 建物よりも、手前のものが引き立てられるような建造物のほうが、周囲に住む人にとってはありがたい。それは草花や樹木にとっても良い背景を与えてくれることで、調和感がある。建造物が単にそれだけで目立つ場合、忌まわしいものを感じてしまう。この場合の象徴性はこの国の風土の中では嫌味になる。