川崎フォトエッセイ  その733  家の事情       HOME

 家の事情は、外からでは伺い知れない。探偵に依頼し、調査すればおおよそのアウトラインは分かるが、それは社会的な基準から推し量っただけの、表面的なものに過ぎない。

 さらにその詳細を調べても、ある物語が見えてくるだけで、その事情に対する詳細が語られるが、これもまた語り手のさじ加減で、歪んでいるだろう。

 つまり、知ろうとする目的に対しての物語であり、それをポイントとしての切り口になる。

 語られることのないエピソードの中に、豊かな事情が隠されていることもある。

 僕らは事情を語るとき、相手に分かりやすく語る。それ以前に相手が聞き出そうとしていることに即して語る。この時、色々なものが抜け落ちる。

 現実化されていないものや、データ化されていないスペックは、単なる「思い」となり、物語化もされないまま、隠されてしまうかもしれない。