川崎フォトエッセイ  その857  縦社会       HOME

 縦社会が露骨だった時代は人々や建物もわかりやすい。

 ある身分の人はある服装をし、ある建物に住んでいた。これは情報としては非常に明快で、視認性がよい。

 今も縦社会は確実に存在しているのだが、図式化しにくい。

 横並びの世界では誰がボスで、その場を牛耳っているのかがわかりにくい。建前としての肩書きからだけでは読みとれないこともある。

 その地域の長老が、それと分かる大きな屋敷に住んでいるとかは限らず、マンションの一室で暮らしているかもしれない。

 村落なら庄屋の屋敷が、どんとそこにあり、村民の関係もある程度固定していたように思える。

 僕らは国民とか市民とかの名で、一括りにされているのだが、平等の世の中が建前になっているだけで、どこかにまだ門閥とかの亡霊を意識しているところがある。

 表面には出ない縦の関係もあり、それが常識として通用している世界もある。