川崎フォトエッセイ  その869  未変換       HOME

 時代や伝統の持つ暗さは、それが今の時代になっても、形として残っている。

 人は形に対して正直に反応する。その形が機能として単純なものであっても、漂っている雰囲気に意味を見出してしまうのだ。

 その意味さえも過去のものであり、今はそれが邪魔になることもある。背負っている過去は、見えなければ分からないが、形として表面に出てしまうと、誤解を招きやすい。

 人は何かに思い当たり、その思いに覆われてしまう。これは情緒面の問題なのだが、気持ちの切っ先は感覚的なものほど強いため、本来の意味に至りにくい。

 今の時代に即して一度変換しないといけない。しかし未変換のままのほうが趣としては好ましいこともある。

 利用できるものと、邪魔なものとが一体となっているところにリアルな現実があり、そこで暮らしているのが、まさに現代人である。