川崎フォトエッセイ  その890  いとしの住処       HOME

 自分が住んでいる建物に長く暮らしていると、自分と一体化するような感じになるときがある。つまり、自分の名前を呼ばれたときの印象と近い感覚だ。

 しばらく旅行に出ていて、住む家に戻る道すがら、自分の領域内に辿り着いたような気持ちになる。

 そして、その建物を見たとき、見慣れてはいるのだが、新鮮な気持ちになることもある。あらためてその建物を見てしまうのだろう。

 旅先の風景を見ていたような頭のまま、自分の近所や住処を観察したとき、その周辺をいとおしく感じることもある。

 建物のレベルに関わりなく、ホッとさせてくれるのは、既知の中に戻れるためだろうか。

 慣れ親しんだ場所は、もうそれに対して意識的に振る舞うことも少ないため、気配りや神経の張り具合が少なくなり、いつものペースに戻れる安堵感があるようだ。