川崎フォトエッセイ  その1145  古びる       HOME

 あるものが固まってしまうと、怖いこともある。どんな状態で、固定されたのかも、問題だが、そのあとの劣化も問題だ。

 物は、そのままでは残らない。作ったときの状態が、いつまでも維持されるわけではないので、それを見込んだ上で、作ることになるのだが、初期の状態とかけ離れてしまうと、怖いことになりうる。

 昔の人も、その昔に作られ、古くなった物を見ていたはずだ。これから作るものも、いずれそうなることを、想像していたはずで、十年、百年後の状態を考えていたはずだ。

 それを考えていたのは、名もない職人かもしれない。百年後や二百年後、ちょうど良い感じで、鑑賞出来るような歪みや劣化を見据えるのだ。

 しかし、作った側の思惑とは違った趣になるかもしれない。そして、見る側も、初期の状態ではなく、古びてしまったものなのに、あたかも最初から、そんな感じであったかのように、味わってしまうかもしれない。

 逆に新仏より、古仏の方が深みがあるように感じるだろう。

 

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